近くて遠い

職場の窓から

 

たとえば空の

ただそこで毎日毎時繰り広げられている

音もなく美しい有り様に

感覚の近しいもの

 

日々の中で

思い出されるのは

 

近くて遠い、

両親と愛猫の日常の瞬き

 

ソファで本を読む父の眼差し

テーブルで本を読む母の鼻筋やページの反射

軒下に洗濯物を干す庭の緑に染まるシルエット

むすびの背中、黄金色の幸せのかたまり

そんなものたちかもしれない

 

母にあんた何言ってんのって

父におまえは谷川俊太郎かって

笑われそうだけど、

むすびは喉を鳴らしてくれるだろうよ。